尋常性白斑とは
尋常性白斑とは、境界が明瞭に肌の色が白く抜けてくる病気です。(尋常性とは「普通の」という意味です。)毛髪部に生じると白髪になることが多いです。
3つのタイプがあります。
- 全身に左右対称に見られる汎発型
- 単発~数個の白斑が部分的に生じてくる限局型
- 皮膚の神経に沿う分節型
汎発型は全年齢層に生じ、新生と悪化を繰り返しながら、徐々に広がります。
分節型の多くは小児または若年者に生じ、20~30%で自然軽快します。
原因
白斑はメラニン色素をつくるメラニン細胞の消失あるいはメラニン色素をつくる機能が停止することにより生じます。その原因はいまだ不明ですが、大きく2つの説が言われています。
自己免疫説
本来、免疫とは外から体内に入ってくるウイルス・細菌を排除する働きをする機構を指します。なんらかの原因で体内にある細胞などを攻撃するようになった状態を自己免疫といいます。白斑の場合は、メラニン色素をつくるメラニン細胞に対する免疫反応が起き、メラノサイトを破壊します。汎発型の尋常性白斑はこの機序が考えられています。
神経説
白斑の分布が神経の支配領域に一致することや白斑部に一致して自律神経の変化(発汗異常)が認められることがあります。また、皮膚の神経終末とメラニン細胞が接続されていることが明らかにされました。それらのことから、分節型の尋常性白斑では神経説が考えれています。
治療
残念がら,現時点で根本治療はありません。以下にあげる様々な治療がありますが、様々な治療があるということは確実に効く治療がないことの裏返しでもあります。
外用治療
ステロイド外用
内服に比べて全身に及ぼす副作用が少ない点からよく用いられます。病初期の白斑に対しては色素の再生がみられることが多いですが、古い白斑では効かなくなります。分節型では効果は少ないです。
ビタミンD外用
単独外用で効果がみられることもありますが、紫外線治療との併用でさらに効果があるとの報告もあります。長期間使用しても副作用が生じにくい治療です。
免疫抑制剤外用(プロトピック)
本来はアトピー性皮膚炎の治療剤であり保険適応外ですが、効果がみられることがあり、ステロイド外用の副作用が出やすい顔面の白斑に用いられことが多いです。紫外線治療との併用は出来ません。
料金
薬剤料 | 10g 1,540円 |
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※価格は税込です。
副作用・合併症
灼熱感やヒリヒリ感
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塗布後に一時的な灼熱感やヒリヒリ感を感じることがあります。特に治療開始初期に見られることが多いです。数日から1週間程度で症状が軽減します。 |
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赤み
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塗布部位が赤くなることがあります。これは薬剤の作用による軽度の炎症反応と考えられます。1~2週間程度で消失することが多いですが、症状が強い場合は治療を中断することもあります。 |
痒み |
塗布部位に一時的な痒みが生じることがあります。これも初期に見られる副作用の一つです。通常は数日から1週間で改善します。 |
皮膚の乾燥 |
薬剤の影響で皮膚が乾燥することがあります。保湿剤を併用することで軽減することが多く、治療期間中に対処可能です。 |
光感受性の増加 |
日光に対して敏感になる可能性があります。日焼け止めを使用し、直射日光を避けることが推奨されます。 |
ニキビの発生 |
薬剤の影響で塗布部位やその周辺にニキビが発生する場合があります。 塗布を控えたり医師の指示で対処することで改善します。 |
感染症のリスク |
プロトピックは免疫抑制剤のため、稀に局所的な感染症のリスクが増加する可能性があります。適切な抗菌治療や薬剤の使用中止で改善します。 |
- これらの合併症や副作用の頻度や程度は患者様ごとに異なります。
- 上記に記載した期間は一般的な例であり、完全に解消するまでにさらに時間を要する場合もあります。
- 気になる症状が見られた場合は、早めに担当医師へご相談ください。
- プロトピックは免疫抑制剤であるため、長期間の使用には注意が必要です。医師の指導に従い、適切に使用してください。
紫外線治療
PUVA(プーバ)
PUVAは光化学療法ともよばれる紫外線治療法の一つです。オクソラレンという光感受性薬剤を前もって塗布または内服したのち、紫外線照射装置で長波長紫外線(UVA)を発するランプの照射を受けます。
ナローバンドUVB
中波長紫外線(UVB)のうち治療に有効な波長(311nm)のみを選択的に発するランプを用いて照射を行います。PUVAのように前もって光感受性薬剤の塗布や内服は必要ありませんので簡便です。
当院で治療が受けられます。
エキシマライト、MEL
紫外線治療の中で最新の治療です。小範囲に強度の強い308nmの中波長紫外線(UVB)を照射します。従来の紫外線治療で効果がなかった場合でも効果が出ることがあります。
当院で治療が受けられます。
手術(皮膚移植)
拡大の止まった分節型の白斑が適応になります。次の2つの方法があります。吸引水疱法は白斑の面積が広い場合、ミニグラフト法は白斑の面積が狭い場合に用います。
吸引水疱法
白斑部の表皮をPUVAを用いて剥離します。お尻や太ももの正常皮膚に注射器を押しつけ吸引し陰圧をかけることにより水疱を作り、表皮を採取します。その表皮を白斑部に移植します。
尋常性白斑に対するミニグラフト法(皮膚移植術、植皮術)
当院で治療が受けられます。
脱色療法
ハイドロキノンモノベンジルエーテル(モノベンゾン)外用
汎発型の白斑で従来の治療に反応せず、その面積が体表面積の半分を超える場合に適応となります。
当院で治療が受けられます。
アートメイク
パラメディカル・アートメイク
パラメディカル・アートメイクは白斑による色素脱失を、アートメイクの施術によって自然な状態に近づける技術です。
パラメディカル(医師や歯科医師以外の医療従事者)の言葉通り、アートメイク・アーティストである看護師が行う医療補助行為となります。